日産が発表した国内外7工場の閉鎖計画が、業界内外で大きな波紋を呼んでいます。
特に注目を集めているのが、日本国内にある5つの完成車工場のうち、どの工場が閉鎖の対象になるのかという点です。
今回は、報道と関係者の声をもとに、閉鎖候補と見られる工場、そしてリストラ策の全容についてわかりやすく解説していきます。
日産が発表した7工場閉鎖の背景とリストラ策の全貌を解説
2025年5月13日、日産は新たな経営再建計画「Re日産」を発表しました。
その中で、世界にある完成車工場17拠点のうち7工場を閉鎖し、10工場に集約するという大規模な構造改革を明らかにしました。
この計画には、日本国内の完成車工場も閉鎖検討の対象に含まれるとイバン・エスピノーサ社長が明言しています。
過去3番目の赤字「6708億円」…業績悪化の主因とは?
2025年3月期の連結決算で、日産は最終損益6708億円の赤字を計上しました。
これは1986年以降で過去3番目に大きい赤字額で、前期の黒字(4266億円)から一転しての大幅赤字となります。
年度 | 売上高(兆円) | 備考 |
---|---|---|
1986 | 約4.5 | 推定値 |
1990 | 約5.0 | 推定値 |
1995 | 約5.5 | 推定値 |
2000 | 約6.0 | 推定値 |
2005 | 約8.0 | 推定値 |
2010 | 約9.0 | 推定値 |
2015 | 約12.0 | 推定値 |
2020 | 約9.9 | 新型コロナウイルスの影響で減少 |
2023 | 約11.5 | 回復傾向 |
2024 | 12.6 |
- 1980年代後半〜1990年代:バブル経済の影響もあり、売上高は緩やかに増加。
- 2000年代:ルノーとの提携や新モデルの投入により、売上高は順調に伸びた。
- 2010年代:グローバル展開の強化や新興国市場への進出で売上高はピークに。
- 2020年:新型コロナウイルスの影響で一時的に売上高が減少。
- 2023〜2024年:市場の回復や新モデルの投入により、売上高は再び増加傾向。
要因としては、販売不振に加え、工場設備などの減損損失約5000億円が影響したほか、米国の関税措置も今後の業績に悪影響を与えるとみられています。
2027年度までに工場削減&2万人リストラの衝撃内容
今回の計画では、2027年度までに世界全体で2万人の人員削減を実施するとしています。
生産部門が最も大きく、全体の65%にあたる1万3000人規模が対象です。
国内従業員も含まれるとされ、波紋が広がっています。
また、日産は部品共通化や開発期間の短縮も同時に進め、5000億円のコスト削減を目指すとしています。
日産の国内5工場のうち閉鎖対象になる可能性があるのはどこか?
日本国内には以下の5つの完成車工場があります。
工場名 | 所在地 | 主要生産車種・業務内容 | 備考 |
---|---|---|---|
栃木工場 | 栃木県上三川町 | 高級車(スカイライン、フェアレディZなど)、エンジン組立、試作車製造、品質評価など | |
追浜工場 | 神奈川県横須賀市 | EV(リーフ)、コンパクトカー(ノート)、試験車両製造、テストコース(GRANDRIVE)併設 | |
湘南工場(日産車体) | 神奈川県平塚市 | 商用車(NV200バネット)、特装車(救急車など)、部品生産、サポート業務 | |
日産自動車九州 | 福岡県苅田町 | SUV(エクストレイル)、ミニバン(セレナ)、EV(アリア)などの主力車種の量産 | |
日産車体九州 | 福岡県苅田町 | 商用車(キャラバン)、特装車(福祉車両など)、部品組立、電動化対応のサポート業務 | (日産自動車グローバルサイト, 日産車体株式会社) |
このうち、どこが閉鎖対象となるのか、現時点では明らかにされていませんが、SNSや掲示板では複数の“有力候補”が挙がっています。
中でも、栃木工場は閉鎖候補として最も注目されており、稼働率や生産車種の状況などからも危うい立場にあると言われています。
もし実際に栃木工場が閉鎖されたら、地元経済や従業員の雇用はどうなってしまうのか?について、詳しくはこちらでまとめています。
▶ 日産・栃木工場が閉鎖されたら何が起こる?地元経済・雇用・再就職の現実をまとめた!
▶ 湘南工場(日産車体)は閉鎖対象?商用車ラインの苦境と地域経済の今後
候補に挙がる「栃木工場」「湘南工場」「群馬の工場」など現地の声
特に閉鎖候補としてよく名前が出ているのが「栃木工場」と「湘南工場(日産車体)」です。
理由としては、いずれも稼働率が低く、製造しているモデルの販売不振や、設備の老朽化が指摘されています。
また、群馬の部品関連工場についても、今後の部品共通化により役割を終える可能性があるとして、注目されています。
知恵袋などの現場ユーザーからは「港のない工場は不利」「移転できる従業員数に限界がある」などの意見もあり、実際に閉鎖された場合の影響は非常に大きいと見られます。
追浜工場や九州工場はなぜ“残る可能性が高い”のか?
一方で、追浜工場や九州2拠点については、閉鎖の対象になりにくいとする見方が強まっています。
特に追浜工場は、電気自動車「リーフ」の製造拠点としても知られ、港も近く輸出に便利な立地であることが大きな強みです。
また、九州の2工場は比較的新しく、稼働率も高いため、生産効率の観点からも維持される可能性が高いとされています。
過去に村山工場閉鎖時の教訓からも、地域経済や雇用への配慮も重視されると見られます。